2020年10月26日月曜日

ハミガキをしている時に感じる安堵

2018年にかいたポストを再録します。エチオピアにいたのはもう、3年ほど前になります…ときが早い


いま、夏休みで実家に帰って来た。実家の無駄にデカイ洗面台でハミガキをしていて思い出したことがあったので、書いておく。

一年ほど前、フィールドワークでエチオピアのある村で住んでいた時、夜寝る前のハミガキの時間がなぜかすごく好きだった。

現地の方々は木の枝を歯ブラシとして上手く使うのだが、私は上手にできないので、持参した歯ブラシを、寝る前にひっそりと使い歯を磨いていた。

家族全員で夜ご飯をいただき、団欒の時間を過ごし(その間もなにか重要な事が起きるかもしれないと思いながら、メモ帳を握り締めている)、眠気の限界がくると、「眠いので、寝ます。また明日。」と言って、寝床に向かう。

メモ帳を置き、歯ブラシを取り出し、歯磨き粉をつけ、口をゆすげる最低限の水を携えて裏庭に向かう。歯を磨きながら真っ暗な庭を進み、ふと上を見上げると、星空が広がっている。今までの人生で見たことのない星がたくさん見え、「うわぁ…今まで見てた夜空ってなんやったんや…」と感動していると、泡だらけのよだれが垂れるので急いで顔を前に突き出す。

服を汚すことは、なんとか防げた。

歯磨き粉の味はすごく人工的だ。ここでの生活ではなかなか出会えない味を感じる。

楽しい。

知らない味を口に含むのは僕にとってすごく楽しいことなんだ…これっていろんな味覚を広げて来た日本人的な感性かしら…などと妄想しつつ、最後に残った奥歯を磨き上げる。

水は貴重なので、二口くらいでゆすぐと、ミントの清涼感を感じる。

その瞬間、なぜか安堵感に包まれるのだ。

たかが歯を磨いただけなのに…

なぜだろう?

色々理由めいたことは思いつくけど、なんだかしっくりこない気もする。

なぜか安心するのだ。歯を磨くと。